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開発チーム 組織と人の成長戦略

開発チーム 組織と人の成長戦略
開発チーム 組織と人の成長戦略
  • 著者: David Loftesness, Alexander Grosse
  • 訳者: 武舎 るみ, 武舎 広幸
  • 出版社/メーカー: マイナビ出版
  • 発売日: 2020/5/29

急成長を前提とするスタートアップ向けの人事戦略論で、10人程度のチームから200人の会社を対象としているようです。「採用」「人事管理」「組織」「文化」「コミュニケーション」の5領域の観点から、必要なプロセス・管理を議論しており、よく構造化されています。 最終章の第12章に、急成長する企業で起こりがちな問題と処方箋(1~11章の内容への参照)がまとめられております。

残念な点として、本書内では議論の理解を補助する多様なブログ記事など副読リソースを提供していますが、bit.lyで紹介されているものは、リンクが切れていたり、乗っ取られていたりすることがあります。

読書メモ

採用

  • 人事のライフサイクルは、募集(紹介、ソーシング、応募)→面接→採用(内部)決定→身元紹介→採用と条件の通知→研修(オンボーディング)→ [中略] →退社手続き

Acquihiring

この他の採用の方法のひとつにAcquihiringがありますが、その内容にもページを割いてました。

  • 文化的不適合が原因で失敗に終わる例も多い。Acquihiring実施には、才能、スキル、文化、価値観でのマッチングが重要になる。マッチングは創業者だけでなく、極力すべての社員とも行う。
  • 被買収企業の現行プロダクトやビジネスの買収後の処遇を計画する。
  • 買収後に「現在手掛けているビジネス・プロダクトが終了する」「被買収会社のチームが解体されて買収会社に組み込まれる」可能性に対して期待値を形成する。
  • 買収前から(同じ釜の飯を食うくらい親密な業務交流があるような)協業で良い関係を築いていると成功しやすい。

研修(オンボーディング)

  • 最初の週、理想的には初日に上司と1 on 1を持つ
  • 幹部に引き合わせるなどし、会社の歴史や製品、現状を伝える機会を設ける(オリエンテーション)
  • 製品への理解、サポートチームで製品が顧客にどう受け取られているのか知ってもらう
  • チーム数が5以上、社員数が20名くらいであればチームローテーションという部門巡回型の職場体験が良い。チーム数がさらに多くなってくると巡回経路が長くなりすぎるため、正式に研修プログラムを作ると良い。様々なフォーマットがありえるが、伝統的日本企業の新卒社員研修のようなチーム配属を伸ばして会社全体を理解してもらうフォーマットも候補にあがる。

人事管理

  • 会社の規模が大きくなるにつれて組織の多層化が必要になる。そこで管理職が登場するが実装の段取りを誤るとと、現場のエンジニアが「二流市民」に落とされたと誤解したり、管理職にならないとキャリアの先がないように錯覚したりする。このため、エンジニア用・管理職用の2通りのキャリアパスを用意するなど、正しいコミュニケーションが処方箋となる (Creating a career path | by Alexander Grosse)
  • プロセス不在だと、業務で不文律がはびこるようになる

コミュニケーション

(COVID前の著書なので、実感としてリモートワークのメリット・デメリットいずれもニュース性がなくなってしまったが) リモートワークの弊害と取り入れに関する工夫も言及されていました。

  • 会社を構成する社員数が多くなると、社員の組み合わせ数が爆発的に増えるためミーティングがミーティングを呼ぶようになる。
  • コミュニケーション手段の選び方、タイミング、透明性、コミュニケーションを取らないという考え方も出てくる。

ヤフーの1 on 1

今では日本でも一般的に行われている1 on 1ミーティングですが、米系IT企業のベストプラクティスのひとつを模倣するモチベーションで導入されている傾向もあって、 正直"定期的な1 on 1ミーティング"なるツールがいつ頃発明されたか、よく分かっていません。

自分の知っている範囲では1995年に出版されたHigh Output Managementで一節を割いて取り上げられている例が文献として最も古く、 シリコンバレーIT企業の第一世代のインテル社の元CEO Andrew Groveによって書かれた本なので、 個人的には、仮に、こちらを起源としています。この本では、1 on 1は企業の価値創造プロセスを円滑にする経営ツールとして取り扱われており、 スタッフ育成やチームビルディングといった現在では中心に据えられているピープルマネジメントとしての役割が非常に薄いようです。

約30年も経てばマネジメントのスタイルは変わって当然ですし、本著が書かれてから社会的に積み重ねられたノウハウもあるかと思います。 そこで、言語化された、アップデート差分を求めて本を探しています。 できれば、日本ドメスティックでない方が良いなと思っているのですが、 1冊目として、こちらの本を選びました。

ヤフーの1on1
ヤフーの1on1
  • 著者: 本間 浩輔
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2017/3/24

本書は、どちらかというと会社の方針など何らかの外部的な理由で1 on 1を行うことを決めたけど、具体的に何をしたら良いんだろう、という方を対象にしているようでした。 現代らしく1 on 1の建て付けはコーチングや傾聴を基本にしていました。

メモ

フォーマット的なもの

  • 内容
    • コミュニケーションのやりとりに、コーチング、ティーチング、フィードバックの3種類がある
        コーチング: 成長を促す質問を投げかける
        ティーチング: 正解を教えて学んでもらう、正解の対応を即座にしてもらう
        フィードバック: 部下が自分・同僚からどう見えているか伝える
    • 部下の非言語的な表現に意識をすること
    • 自らも傾聴していることを表現する振る舞いを意識する
    • コンテンツの一例
      • 進捗(うまくいった点、いかなかった点)
      • その前回からの経験と学び
  • 終わり(Next Action)
    • ミーティングで取り上げた問題への対処は部下側に考えさせる
    • 期限を決めさせてコミットを高める (「いつまでにやろうか」)
    • 自分もアクションに関与することで実施率を高める (「手伝えることある?」)

運営的なもの

  • 水曜日午後、木曜日にやると、経験の記憶が新鮮でNext Actionが翌日から実行できる

その他

1 on 1の社内展開をどのように行っていくか、各管理職に実施を確実にしてもらうかという論点もありました。今日現在の自分の問題意識には沿わず、そこは読み飛ばし。

なぜトップダウンでDXを進められないのか

DXを企業変革として見る

DXといえば、その過程で重用する従業員の重み付けをどう変えるか、理想とされる行動規範や能力と現状のギャップにどのように立ち向かうのか、 あるいは所属する構成員の処遇をどうするべきなのかといった議論は身近な問題であって目に行きがちです。 しかし、DXがある種の企業変革の達成を目指す性質から 一般に「企業変革」がどのような道筋をたどるかを知ることは、 始まってしまったその変革の渦中にあって自分自身がどのように振る舞うべきか考えるのに有益だと思います。

企業変革といえばジョン・コッターが有名ですが、近年の彼の研究の振り返り(企業変革に成功する組織は何が違うのか)でも、8割近くの取り組みが失敗に終わっていると分析されております。 この割合をDXにも当てはめるのであればDXがうまく行かなかった経験の方が共感を集めるのもうなずけます。

企業変革力
企業変革力
  • 作者: ジョン P コッター
  • 翻訳: 梅津 祐良
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2002/4/15

8段階のプロセス

ジョン・コッターは企業変革を8段階のプロセスに整理し、8割近くが失敗に終わる企業変革がどこで躓くのか事例を交えて紹介しました。 この整理で個人的に目を引くのは従業員支配と言われる日本企業を観察対象にしたのではないのにも関わらず(おそらく米国企業中心)、 変革の起点をトップダウンに据えず、組織構成員の啓蒙や腹落ちを通した協力関係の構築を重要視していることです。 組織変更のような大胆な変更は変革の入り口ではなく、小さな成功を積み重ね社内の信頼を得た上で実施することが説かれています。

実際、米国においても一部のスター企業を除けば、採用競争力やリテンションの観点からマネジメントが従業員から見放されないように慎重なコミュニケーションを取っており、トップがDXを強くおせば付和雷同して変革が予定通り進むこともないのが相場とのこと。

つまり、残念ながら"私"(=企業内DX論者)の密かに思い描く最強のDXがトップダウンで承認され、その権威を借りて他の"間違ったDX"を調伏するという流れは古今東西起こり得ないようです。

コッターが示すプロセスでは、そのような奇跡がないとしてDX必要性を組織内で知らしめることを最初に行うべきとしています。

危機感喚起
  • 事業変革の要請を従業員に認めさせる
  • 従業員に新しい機会の提示する
 
チーム結成
  • 推進メンバーを選任する
  • メンバーの活動時間を確保する
 
ビジョン&戦略作成
  • DX後の自社がどうなるか解像度を高める
  • ビジョン実現のための戦略を立てる
 
ビジョン&戦略周知
  • 様々な手段でビジョン・戦略を社内提示する
  • 推進チームが自ら模範事例を作る
 
賛同者発見
  • ビジョンと戦略に合致する従業員を発見する
  • 変革の障害を取り除く
 
短期的成果
  • 業績上で目に見える成果を上げる
    (6-8ヶ月、長くて14ヶ月くらいで業績化)
 
規模拡大
  • 短期成果を積み長期的な変革に移行する
  • 短期成果を信頼の原資に組織や制度を変更する
 
新文化定着
  • 大胆な体制変更を行う
  • 後継者育成と選任する

どこでこけるか?

DXがこけるときに限らないが、管見の限りでは変革において必要性が十分に納得されないまま施策の具体化や行動に移り推進力に欠けたまま尻すぼみになる事が多いようです。ですので、変革に何らかの形で関わることになった場合、 担当レベルであっても周囲に危機感醸成を改めて丁寧に行うことはいくらやっても損はないように思います。

その手段としては説得に関する極めて政治的な手法が役に立ちます。

Wikipediaの項にあるように説得力を構成する要素は様々で、その効能も受け取り手によって異なります。具体的な行動指示が絶大に効果を発揮する同僚もいれば、十分に抽象化された話の方に安心感を覚える上司もいます。 しかし、仕事(DX)をどのように進めればよいかわからない"顧客"に「ソリューション」を提示するわけだから、 おおよそBtoB商材の提案書づくりの枠組みをうまく応用できます。

例えば、伝わる提案書の書き方(スライド付)では、受け手が考える避けたい失敗の解像度を高めることと自身の提案がそれを避けられることの安心感を与えることの重要性を強調しています。 提案が「社内に散らばるアナログデータのデジタル化」であればSansanのCMのような仕立て、 「業務の標準化」であればKintoneの車内広告から学べることが多くあるかもしれません。

その他の参考書

この他の取り組み方にあたってはコッターの本書をあたるのがよいと思います。

しかし、コッターの著書があまりにも事例的で体系化が足りないと感じるのであれば、日本企業での知見をまとめた本があります。

企業変革の実務
企業変革の実務
  • 作者: 小森 哲郎
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2018/11/21

また、半沢直樹調の物語で企業変革を読みたければ三枝三部作が良いです。変革障害の放逐にも言及があり、自分自身の振り返りにもなります。

V字回復の経営
V字回復の経営
  • 作者: 三枝 匡
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2021/4/2

DX担当者になったら考えたいこと

「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」というキーワードを目にすることが大変多くなった。

この5年間の間のだけでもIndustry 4.0, Society 5.0, ディープラーニング, AIといった様々なキーワードが入れ替わり立ち替わり似たようなメッセージを発し続けている。 それらの描く美しい未来像に触れ技術の要素の習得に力を入れつつも、 思い通りにならない会社組織を恨めしく思ったり、社会の重鈍さに腹を立てたりしてきたエンジニアは少なくないと思う。 あるいは一歩進んで、そういった現状を言語化・図示した資料に出会い、社内でのICT介護のやりとりを思い浮かべながら、 「よくぞ言ってくれた、これを檄文にみんなを決起させよう」と気持ちを高ぶらせているところなのかもしれない。

私自身そんなエンジニアの一人なのかもしれない。

だが、これは「無敵の『DX』でなんとかしてくださいよォーー」の前兆ではないのか?

「『DX』は手段です」と、したり顔で公演する識者の講演に首がもげそうなくらい頷くモブへと一直線に舗装された道の入り口に立っているのではないか?

そんな未来に到達する前に少しだけ悪あがきをしてみたい。

DX担当者に任命されたら…

ある時、あなたは上司に呼び出されたとしよう。

なんと「社長から『DX』を推進するように指示があった。『DX』は何やらパソコンを活用する話で若い人の柔軟な考え方が大事だそうだから君に任せたい。」という。

なんとも危ない匂いのする話だ。どこかでダメと書いてあった始まりそのものではないか。

社長の頭の中

さて、よくわかりもしないDXをまるっと若手のあなたに押し付けた社長は全くのアホで要高度ICT介護の上司なのだろうか。

だが、特に一部上場企業などのサラリーマン社長であれば、実績を積み、類まれな何らかの才能を発揮してその立場についていると考えるのが妥当だろうし、その立場から様々な形で一流の指南役も社内外についていると見るのが良いと思う。

私自身もしがないサラリーマンで、社長の経験もなくなったこともない立場の人間の経験は想像でしか語れないが、幸い、"CEO Job Description"とググるとCEO(≒社長)の役割についていくつもの記事があり、 ドラッカーなど著名な経営研究家が色々な名言を残してくれている。

また、CEOの直面する「課題」などもアンケートが取られていたりする。

そういった情報をまとめると

  • (サラリーマン)社長の最も重要なミッションは「会社を永続させること」
であり、そのために会社に関するメッセージを顧客・社員・投資家・政府などあらゆる方面とやりとりし、 それらをまとめ上げながら実行に移していく(指示を出す)といった役割を担っているようだ。

会社が永続できなくなる落とし穴は山ほどある。

もっとも当たり前のものは既存事業のシェアを落とすなどしてコストが売上より大きくなり赤字転落後そのまま運転資金が枯渇すること。「永続」すれば良いと言ってゾンビ飛行ギリギリとなってしまえば、成長が期待できない会社として投資家に愛想をつかされ、これもまた資金調達が苦しくなる。

だが、現在においては、人種や性別などの多様性対応を誤り、顧客離れ、製品の生産やサービスの提供が止まってしまったり、温暖化などの環境対策を狙いとした政策への対応に失敗し厳しい罰則を受けたり、 品質検査の不正行為で賠償に発展したり、昨今コロナ禍で顕在化したように市場が蒸発したりしてしまうこともある。

全部優秀なスタッフに任せることができれば良いが、意外と社長によるきめ細かなマニュアル運転が必要になってしまっている企業は多いと思う。

そんな中、投資家、つきあいのある政治家(官庁/政治団体)、社外取締役から「御社のDXはどうなっていますか?」とくると、何かしらの回答準備が必要になってくる。

社長は思う。

「Industry 4.0, Society 5.0, AI, 自分がポジションに付く前に似たような話はたくさんあったじゃないか。なんで今また夏休みの宿題を最後の1日でこなさないとならないような状況に…。とはいえ、なんとか形にしていかないと。」

デジタルネイティブな会社であれば、社長になったあとでデジタル技術に対する意識が急激に高まるという間抜けな話にはならないだろう。だが、生産や営業といった役割分化した組織の中で上がってくると、いくらゼネラリスト養成学校のJTCといえども壁の向こうを本当の本気で見るのは社長になったときくらいだ。

DX担当者として…

過小評価かもしれないがこうやって社長の頭の中を仮定すると、DX担当者として最初に着手することは「会社の永続」と「DX」を結びつけることだ。

そして、その方向性としては大きく分けると

  1. 既存事業のExploit(売上増加[アップセル]/コスト削減)
  2. 新規事業のExplore
の2つになる。

幸い、この方向でまとめている記事を見つけたので紹介する。

この記事と重複する部分もでてくるが、次回は、ここからさらに具体的な打ち手の選択肢へと掘り下げたい。

メモ

ベンチャー投資のディールフロー

リモートワーク主体・給与体系が超透明で有名なGitlabですが、スタートアップ買収のプロセスまで透明になっています。

このディールフローは、

投資実行にいたらないまでも、VCが保有するディールフロー・投資候補の企業群リストそのものに価値があったりする。
deal flow, ディールフロー | VCレスキュー(仮)
等々言われていたりして、一子相伝だったり、門外不出だったりします。 実際のところ、ガイドラインはあるもののカチッと字にして標準化しろ, PDCAしろと言われると辛いものがあるせいかもしれません。

投資の対象

スタートアップへの投資の目的は通常Financial Investment(財務リターンの追求)とStrategic Investment(戦略リターンの追求)の2つに分類されております。

事業会社(メーカー等を中心とした投資専業じゃない会社)がスタートアップへ投資する場合は、CVC(Corporate Venture Capital)を組織し、そこから投資することもままあり、 特に日系のCVCは「事業提携を狙いとしたStrategic Investment」を目的として唄い、 財務部門や開発部門から人をローテーションで集めるなどして対応にあたることも少なくないように見えます。

対して、欧米系のCVCはスタートアップ投資への打席に立ち続けることを重視し、「Financial Investment」に比重を置くことが多いように見えます。 CVCのメンバーはVCなど金融系(の投資系)のキャリアが背景にあるメンバーを雇って、本体と独立で動くパターンが多いと思います。

もちろん、Financial Investmentに比重をおいているファンドであっても、金が儲かるならどこでも投資するというわけではなく、 ファンド自身の差別化をはかるためにも、事業部門との何らかの関係が見込める投資テーマを持っています。

例えば、シリコンバレーのベンチャーキャピタルの、5つの秘密と成功の秘訣 | 500 Startups Japanでは、ファンドに対し「1.何かの象徴として認識されるようになれ=ブランドになれ」ということと、 「2. 投資Thesis(ポリシー・理論)を持て=投資基準を明確にせよ」ということを挙げています。

Gitlabでは?

さて、この点、Gitlabは投資(買収先)スタートアップを

  • 社員数10名以下
  • Gitlabの長期開発戦略(3年)に合致すること

としており、

  • シードステージ対象
  • プラダクトの開発加速を狙いとしたAcqui-hiring(Strategic Investment)

を活動のガイドラインとして位置付けています。早い話が、スタートアップ買収を採用活動の一環としてやっているということです。

実施部門はCorporate developmentですね。

ディールフロー

通常スタートアップ投資は、たくさんの会社情報を集めて相対評価しながらふるいをかけながら進めます。東証と違って非公開株式を扱うので相場観の形成は属人的です。普段からたくさん見ておくことが大事なのでしょう。 さまざまな事情で「絶対ここに投資するんだい」と決めてから、一生懸命理屈をつけていく場合もあるようですが…。

ディールフローはどこも似ていてざっくり

  1. ソーシング/テーマ決め
  2. 候補リストの作成/声かけ(提案)
  3. デューデリジェンス; 会社の身体検査
  4. 投資実行

という流れです。こちらも様々な事情によりソーシングの時点でかなり的が絞られているパターンもあるようです。

先日読んだ「経営パワーの危機」では、

リスク投資ばかりを行う米国のベンチャーキャピタルはディールフローと呼んで広い情報網から案件を集め、一〇〇件に一件くらいの割で厳選する。
三枝 匡. 経営パワーの危機 日本経済新聞社. Kindle 版.

とあって、100件はどこの数字かなと思いながら読んでいました。ちなみに、本書では

面白い投資先があまり見つからなくて数少ない投資案件から選ばざるを得ませんでした
三枝 匡. 経営パワーの危機 日本経済新聞社. Kindle 版.

と、投資失敗の風景が描かれています。1の時点で頑なになりすぎるのも良くないようですね。

Gitlabでは?

量が多いので超訳とともに、ざっくり抜粋します。

ディールフロー

これに対してGitlabのディールフローは以下のようです。

  1. Pipeline Building
    • (CrunchbaseのDBなど)マスターリストに掲載されている会社数: 15,000+社
    • プロジェクトで投資検討対象にする会社数: 1,000社
      • 社外データ: 800社
      • 社内情報: 100社
      • Cooperate Development部で作成する候補: 100社
    • 投資検討優先会社: 400社
  2. Exploratory
    • 投資提案会社数: 400社
    • 意思確認・会社の状況確認: 300社
    • 絞り込み(優先づけ): 100社
    • 事業部門同席との絞り込み・投資先への技術的質疑応答: 50社
  3. Early Diligence
    • 投資検討: 30社
  4. Confirmatory Due Diligence
    • 投資条件交渉: 15社
  5. Integration
    • 投資実行: 10社

1. Pipeline Buildingで何をするか

商品企画チームとM&Aを通した強化が必要そうな分野を特定する。活動を通して買収検討リストを作成する。

  1. Crunchbaseなどスタートアップ情報が載っているデータベースからどういった分野がホットか眺めて絞る
  2. Gitlab社社員や知り合いなどにコンタクトがあったスタートアップ情報を集める
  3. Gitlab社の長期ビジョンや戦略に応じて調査をかける

2. Exploratory

お互いの方向性や買収そのものがマッチするかどうかの確認。統合のイメージ感も検討。

3. Early Diligence

買収検討着手。検討期間中はコードネームをつけるらしい。

  1. NDA締結
  2. チームと責任者(リード)の設定
  3. Preliminary diligence
    各種情報の整理
    1. Financials
      • 財務3表
      • 税務状況
    2. Employees
      • 社員名簿: 名前・役職・人気・在籍年数・勤務地・給与・LinkedInプロファイル・プログラミング能力など
      • 社員の履歴書
      • 雇用契約書・知財権譲渡契約
    3. 取引先情報
      • 顧客情報: 名前・月間売上・契約日
      • サプライヤ情報: 月間支出
    4. 資産
      • 買収で取り込む有形・無形資産
      • 買収では除外される有形・無形資産
    5. Tecnical BOM / 技術資産
      ソフトウェア、データ、SNSアカウント等々
  4. Early technical diligence
    コードレビューやOSS利用状況、開発規約等のレビュー
  5. 従業員のレビュー(キーパーソンの特定等)
  6. 給与など待遇のレビュー
  7. 開発状況に関するインタビュー
    対象: キーパーソン
  8. 製品統合のマイルストーン検討
  9. ROIの算定
  10. 企画の作成・社内承認
  11. 買収条件の調整(Term Sheet)

4. Confirmatory Due Diligence

本格的なデューディリジェンス. 以下略.

参考文献

  1. ベンチャーキャピタルの仕組みとディールソーシングの重要性:とむさとうのコラム集
  2. CVC : ベンチャーキャピタリストへの道
  3. Acquisition Process | GitLab

イノベーション経営ブームと現代の古典「イノベーションのジレンマ」について

「イノベーションのジレンマ」

技術系の企業では、経営者から新米技術者まで部署をまたいで親しまれる名著。

毎日まじめに正しく働いているのに気がついたら自分の働いている会社が新興企業の勢いを目の前に力を失ってしまうという怪談めいた話に背筋を凍らせ、時には、夏休みの怪談・恐怖体験披露のように、会議で話題になり、ひんやりとした気持ちになるも日常に戻るとすっかり忘れられてしまう存在です。

ところが、テスラ、UberやAirbnbの成功で、日本経済を支えているとも言える自動車分野が脅かされ始めた(と感じらる)昨今、日本政府をはじめ尻に火がついたようにコネクテッド・インダストリーズやインダストリー4.0を掲げて政策を手探りしはじめ、 日本企業も「オープンイノベーション」が答えとばかりにシリコンバレー周りに熱を出している様子も報道されています。

これは、日本企業だけでなく、ダイナミックさで知られる米国企業でも同じようで、経営管理的なマネジメントでガチガチに固めたポートフォリオ経営の企業でも

と、経営をコンパクトに回せるように肉体改造し、「破壊的イノベーション」の創出にも手を出し始めています。

破壊的イノベーションの5原則

集合・位相・圏 数学の言葉への最短コース
イノベーションのジレンマ
  • 作者: クレイトン・クリステンセン
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2001/7/1

本書を読み直してみると、破壊的イノベーションを起こすための処方箋として示唆が多く、デザインシンキングからオープンイノベーションまで、同じエコシステムの中で育まれていることが強く意識されます。

  1. 破壊的イノベーション技術の商品化は顧客担当部門に推進権限を与える

    権限の与え方として、下記が挙げられていますが、「新しいもの」は説得が難しいため「組織の分離」が推奨されています。

    1. 会社を説得する
    2. 組織を独立させる
  2. マーケットのサイズに合わせた小さな組織でオペレーションする
  3. 試行錯誤を前提に「調査・計画・実行」にとらわれない動きで新しいマーケットを見つける
  4. 新規事業部門は既存部門を利用しつつ評価指標を切り離す
    • 利用する:リソース類(資金や人、技術)
    • 切り離す:コスト管理、業績評価基準
  5. 新しいマーケットを探すこと

    新しい技術について、"ありのままを評価"してくれる市場を見つけることに力を入れ、既存事業"にも"受け入れられるための技術的ブレークスルーを夢見た磨きをかけないこと。

この本が書かれたのは、もう20年近く前になる2001年です。現在では、本質的な価値はそのままに、どうやって、この"処方箋"を実行に移していくかに磨きがかけられて来ているように思います。

トヨタがTRIをシリコンバレーに設置したり、AI部門を独立で立ち上げたり、「オープンイノベーション提携」を発表するなかで、なかには処方箋をはみ出した内容も見かけます。 本書の処方箋は必要条件ではありませんが、今後10年でどの施策が効果的だったのか見えてくるのではないでしょうか。

終わりに

本当は下記の関係を整理しようと思って書き始めましたが、おさらいのために読んだ「イノベーションのジレンマ」の偉大さに感じ入るところになりました。舶来もののビジネス書は概念が色々つながってて、一世一代ものの和書とは層の厚みが違うなと感じます。

以下は全て同じ文化圏で一枚岩でつながっています。

  • デザインシンキング
  • リーンスタートアップ
  • Business Model Canvas
  • Value Proposition Design
  • リーン顧客
  • デジタルトランスフォーメーション
  • オープンイノベーション
  • デジタルツイン
  • ビジネスサイクル
  • 組織のフラット化
  • Teal組織