技術系の企業では、経営者から新米技術者まで部署をまたいで親しまれる名著。
毎日まじめに正しく働いているのに気がついたら自分の働いている会社が新興企業の勢いを目の前に力を失ってしまうという怪談めいた話に背筋を凍らせ、時には、夏休みの怪談・恐怖体験披露のように、会議で話題になり、ひんやりとした気持ちになるも日常に戻るとすっかり忘れられてしまう存在です。
ところが、テスラ、UberやAirbnbの成功で、日本経済を支えているとも言える自動車分野が脅かされ始めた(と感じらる)昨今、日本政府をはじめ尻に火がついたようにコネクテッド・インダストリーズやインダストリー4.0を掲げて政策を手探りしはじめ、 日本企業も「オープンイノベーション」が答えとばかりにシリコンバレー周りに熱を出している様子も報道されています。
これは、日本企業だけでなく、ダイナミックさで知られる米国企業でも同じようで、経営管理的なマネジメントでガチガチに固めたポートフォリオ経営の企業でも
こういう経営してたら、IBMみたいにAmazonがいつのまにか本業に攻め入ってきて苦境に陥り、人事含めて「現代化」を急速に進めている、というのが大きなトレンドですよね。GEなどもそうかなと。 https://t.co/LkDmF3z9hL
— とくさん (@nori76) March 18, 2018
と、経営をコンパクトに回せるように肉体改造し、「破壊的イノベーション」の創出にも手を出し始めています。
破壊的イノベーションの5原則
本書を読み直してみると、破壊的イノベーションを起こすための処方箋として示唆が多く、デザインシンキングからオープンイノベーションまで、同じエコシステムの中で育まれていることが強く意識されます。
- 破壊的イノベーション技術の商品化は顧客担当部門に推進権限を与える
権限の与え方として、下記が挙げられていますが、「新しいもの」は説得が難しいため「組織の分離」が推奨されています。
- 会社を説得する
- 組織を独立させる
- マーケットのサイズに合わせた小さな組織でオペレーションする
- 試行錯誤を前提に「調査・計画・実行」にとらわれない動きで新しいマーケットを見つける
- 新規事業部門は既存部門を利用しつつ評価指標を切り離す
- 利用する:リソース類(資金や人、技術)
- 切り離す:コスト管理、業績評価基準
- 新しいマーケットを探すこと
新しい技術について、"ありのままを評価"してくれる市場を見つけることに力を入れ、既存事業"にも"受け入れられるための技術的ブレークスルーを夢見た磨きをかけないこと。
この本が書かれたのは、もう20年近く前になる2001年です。現在では、本質的な価値はそのままに、どうやって、この"処方箋"を実行に移していくかに磨きがかけられて来ているように思います。
トヨタがTRIをシリコンバレーに設置したり、AI部門を独立で立ち上げたり、「オープンイノベーション提携」を発表するなかで、なかには処方箋をはみ出した内容も見かけます。 本書の処方箋は必要条件ではありませんが、今後10年でどの施策が効果的だったのか見えてくるのではないでしょうか。
終わりに
本当は下記の関係を整理しようと思って書き始めましたが、おさらいのために読んだ「イノベーションのジレンマ」の偉大さに感じ入るところになりました。舶来もののビジネス書は概念が色々つながってて、一世一代ものの和書とは層の厚みが違うなと感じます。
以下は全て同じ文化圏で一枚岩でつながっています。
- デザインシンキング
- リーンスタートアップ
- Business Model Canvas
- Value Proposition Design
- リーン顧客
- デジタルトランスフォーメーション
- オープンイノベーション
- デジタルツイン
- ビジネスサイクル
- 組織のフラット化
- Teal組織
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